space水源地生態研究会の活動は、以下の7グル-プで構成しています。
1.ダム湖生態系研究グループ
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ダム湖は、人工湖の地形や運用などに由来し、自然湖沼と比較して特殊な陸水学的・生態学的特性を持つと考えらます。ダム湖生態系研究グループでは、ダム湖の水循環、陸水学的特性、生物群集について明らかにすることを目的として研究を進めています。また、自然湖沼と比較して水位変動が大きなダム湖では湖岸と水位変動帯に自然湖沼とは異なった生態系が発達します。そのため、ダム湖沿岸植生の発達要因、沿岸植生の生態系機能、水位変動の湖沼生物群集に対する直接的・間接的影響の研究も進めています。これらをもとにダム湖や沿岸エコトーンの生態系管理について提案することを目指しています。

主要な調査地
三春ダム(阿武隈川水系、福島県)

進行中の研究課題

  1. ダム湖の流動特性の把握(自然湖沼との比較)
  2. ダム湖生物相の特性把握とその要因解析(魚類、底生動物、プランクトン)
  3. 沿岸帯エコトーンの類型化(地形、堆砂デルタに着目)
  4. 沿岸帯エコトーン生物相の短期的・中長期的動態把握
  5. 沿岸帯エコトーンがダム湖生態系に与える影響
  6. 外来種駆除の方法検討と駆除の生態系影響

代表的な成果
Azami, K., Fukuyama, A., Asaeda, T., Takechi, Y., Nakazawa, S. and Tanida, K. (2013) Conditions of establishment for the Salix community at lower than normal water levels along a dam reservoir shoreline. Landscape and Ecological Engineering 9: 227-238.
石崎陽子・野田香織・渡邉 泉・東 信行 (2011) 微量元素分析によるダム湖内生息魚類の生息場所判別手法の検討.土木学会論文集G 67: Ⅲ_311-Ⅲ_316.
熊沢一正・大杉奉功・西田守一・浅見和弘・鎌田健太郎・沖津二朗・中井克樹・五十嵐崇博・船橋昇治・岩見洋一・中沢重一(2012)ダム湖の水位低下を利用した定置網による外来魚捕獲とその効果. 応用生態工学 15: 171-185.
土岐範彦・大杉奉功・中沢重一・鎌田健太郎・熊沢一正・浅見和弘・中井克樹(2013)オオクチバスが優占する前貯水池の魚類群集構造と水抜きによる駆除とその後の変化.応用生態工学 16: 37-50.

梅田信・柴田光彦・牛島健・田中仁 (2010) 三春ダムの植物プランクトンと濁質堆積を中心とした物質循環解析. 環境工学論文集 47: 175-183.
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2.ダム下流生態系研究グループ
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ダム下流生態系研究グループは、ダムの下流生態系への影響の評価、および影響を軽減する方策の評価に関する枠組みをつくることを目的としています。河川は、水だけでなく土砂やその他物質が、時間的に変動しながら流下しています(要素の経路と輸送量=フラックス)。ダムがあると、ダム貯水池、ダムの運用、ダム下流の河道景観の特徴に応じてこのフラックスは変化すると考えられます。本グループでは、所属する各委員が事例研究を進めつつ、過去に行われてきた多くの事例研究を統合化し、水、土砂、栄養塩、有機物などの河川におけるフラックスとその変化のモデル化を進めています。これらのフラックスと生態系の機能やサービスとの関係を定量化することにより、ダムの影響評価と影響軽減策評価が可能になると考えています。

主要な調査地
阿木川ダム(木曽川水系、岐阜県)
比奈知ダム(淀川水系、三重県)
真名川ダム(九頭竜川水系、福井県)
木津川(淀川水系、三重県・京都府)
矢作川(矢作川水系、岐阜県・愛知県)

進行中の研究課題

  1. ダムが建設される上中流域の潜在河道特性の類型化
  2. 河川生態系の構造と機能に関する普遍的なモデルの構築
  3. ダムによるフラックス変換の実態把握と類型化
  4. フラックス変換に由来するダム直下における生態系変質の把握
  5. ダム下流域での景観(河道・植生,生物相)変遷の把握
  6. 保全策指針提案(放流フラックス制御,下流河川景観(河道・植生動態の復元)

代表的な成果
Mochizuki, S., Kayaba, Y. and Tanida, K. (2008)  Resposes of benthic invertebrates in an experimental channel to artificial flushes. Hydrobiologia 603: 73-81.
Ock, G and Takemon, Y. (2013) Effect of reservoir-derived plankton released from dams on particulate organic matter composition in a tailwater river (Uji River, Japan): source partitioning using stable isotopes of carbon and nitrogen. Ecohydrology, Published online in Wiley Online Library (wileyonlinelibrary.com) DOI: 10.1002/eco.1448
角 哲也・石田裕哉・佐竹宣憲 (2012) ICタグを用いた流水型ダム貯水池内における土砂移動特性の把握. 土木学会論文集B1(水工学) Vol.68, No.4, I_1171-I_1176.
田代 喬・奥田千賀子・辻本哲郎(2014)底生魚の生息場所からみたダム下流の河床のアーマー化と土砂還元による機能の回復. 土木学会論文集B1(水工学)70(4):I_1321-I_1326.

戸田祐嗣・溝口祐太・野尻晃平・山下貴正・辻本哲郎 (2013) 河川連続体仮説と洪水パルス説を統合した河川水系一貫物質循環解析. 土木学会論文集B1(水工学) 69(4): I_1687-I_1692.
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3.周辺森林研究グループ
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ダム湖には周辺森林から、おもに河川を通じて、大量の有機物が流れ込みます。その一方ダム湖からは、これら有機物起源の栄養塩が生物によって陸上にもちだされていると推測されます。湖内では陸上あるいは河川起源のデトリタス(落ち葉や死体などの生きていない有機物)が腐食連鎖をつうじて栄養塩に分解されて陸生・水生の植物体に移行し、それを陸上・水生昆虫が食い、さらにこれらが鳥や魚に食われて最終的に周辺森林に戻ると考えられます。周辺森林研究グループは、こういった栄養塩の動きをとおして、ダム湖と周辺森林の相互作用を解明することをねらいとしています。

主要な調査地
寒河江ダム(最上川水系、山形県)
菅生ダム(夢前川水系、兵庫県)

進行中の研究課題

  1. 日本各地の流域と森林、およびダム堆砂デルタの類型化。
  2. ダム湖からの水生昆虫の羽化量とその季節変化
  3. 陸上生物による羽化昆虫の利用
  4. ダム湖で成長した魚類の上流河川への移動
  5. 水域起源栄養塩の周辺森林への移動

代表的な成果
Chibana, T., Harada, D., Obana, M. and Sugawa, R. (2013) Effect of basin geology on riverbed configurations formed upstream and downstream of a dam. Advances in River Sediment Research. pp.1551-1556.
増山貴明・吉村千洋・藤井学・伊藤潤・大谷絵利佳 (2011) 寒河江ダム貯水池と流入河川のエコトーンにおける堆積土砂と土壌環境特性の空間分布. 応用生態工学 14: 103-114.
中島 拓・東 淳樹・一柳英隆・武浪秀子・小城伸晃・中村夢奈・江崎保男 (2011) 寒河江ダム月山湖の水位変動帯湿性草原における小型哺乳類の餌. 寒河江川流域自然史研究5:30-35.
沼宮内信之・武浪秀子・白井明夫・一柳英隆・江崎保男 (2011) 寒河江ダム上流端で初夏に干出する湿地土砂から芽生えた植物の種組成.東北植物研究16:53-58.

Ida, H. Hotta, M. & Ezaki, Y. 2013 A bagging experiment to evaluate the effect of predispersal predation exclusion on nut viability in beech (Fagus creanata Blume). Japanese Journal of Forest Environment 55: 133-137.
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ダム湖における栄養塩の動き

4.分断影響研究グループ
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ダムによる水生生物の移動分断は、ダム湖と自然湖沼を比較した場合の本質的な違いであると考えられます。移動分断により水生生物個体群の孤立化を進め、また、ダムの存在や管理の影響によってハビタットが変質することと合わさって、それぞれの局所個体群、ひいては流域個体群の絶滅確率を高めると考えられます。分断影響研究グループでは、ダム等による分断の影響について実態を把握すること、個体群存続性に関するモデルを作成すること、また、ダムの分断化が流域個体群に与えるいろいろなレベルにおける影響を定量化したハザードマップ作成を試みます。これに基づきダムが存在する流域での個体群管理方針を提案することを目的としています。

主要な調査地
吉野川(吉野川水系、高知県・徳島県)
重信川(重信川水系、愛媛県)

進行中の研究課題

  1. 四国の河川流域における魚類の分布および分断化影響の解析
  2. ハビタット変質の評価
  3. 分断化影響マップ(ハザードマップ)作成

代表的な成果
Kawanishi, R., Inoue, M., Takagi, M., Miyake, Y. and Shimizu, T.  (2011) Habitat factors affecting the distribution and abundance of spinous loach, Cobitis shikokuensis, in southwestern Japan. Ichthyological Research 58: 202-208.
菊地修吾・井上幹生 (2014) 人工構造物による渓流魚個体群の分断化:源頭から波及する絶滅. 応用生態工学 17: 17-28.
Omori, K., Ohnishi., H., Hamaoka, H., Kunihiro, T., Ito, S., Kuwae, M., Hata, H., Miller, T.W. and Iguchi, K. (2012) Speciation of fluvial forms from amphidromous forms of migratory populations. Ecological Modelling 243: 89-94.
高木基裕・柴川涼平・清水孝昭・大森浩二・井上幹生(2013)吉野川におけるオオヨシノボリ個体群の遺伝的分化および陸封化. 応用生態工学 16: 13-22.

Yamada, Y., Mito, Y. and Nakashima, N. (2010) Organic pollution in dammed river water in a low-precipitation region of Japan. Limnology 11: 267-272.
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5.初期変化研究グループ
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ダム事業では、堤体工事が終了するとダム湖に水を貯めます。最初は、試験湛水として行われますが、その際、水がたまることによって、ダム湖、河川、周辺陸上の生態系に大きな影響をあたえると考えられます。初期変化研究グループでは、ダムの最初の湛水直後、および数年以内という時間スケールで起こる現象を明らかにすることを目的として研究を進めています。また、ダム事業においては、湛水などの直接的な影響のほか、地域住民の土地利用や自然への働きを変化させることで間接的に生態系へ影響を与えることも考えられます。そのような社会的な変化の間接影響についても対象としています。

主要な調査地
嘉瀬川ダム(嘉瀬川水系、佐賀県)

進行中の研究課題

  1. 試験湛水後の水生生物相の変化とその経時的特性
  2. 試験湛水後の陸上生物相の変化とその経時的特性
  3. 流域の水循環、栄養塩循環の変化とその経時的特性
  4. ダム事業に由来する、人の自然への働きかけの変化、土地利用の変化
  5. 土地利用の変化に由来する生物多様性の変化

代表的な成果
井原高志・乾 隆帝・大畑剛史・鬼倉徳雄 (2011) ダム湖流入河川における国内外来魚ハスOpsariichthys uncirostris uncirostris の産卵環境. 生物地理学会会報 66: 41-48.
大串浩一郎・鶴田芳昭 (2009) GISを用いた有明海流入河川流域の流出・負荷モデルの構築. 河川技術論文集 15: 201-206.
鬼倉徳雄・井原高志・乾 隆帝(2013)ダム湖における淡水魚類の分布予測:嘉瀬川ダムの外来魚定着・在来魚絶滅リスク評価. 生物地理学会会報 68: 11-12.
Supit, C. and Ohgushi, K. (2012) Prediction of Dam Construction Impacts on Annual and Peak Flow Rates in Kase River Basin. Annual Journal of Hydraulic Engineering, JSCE 56: I_121-I_126.

田悟和巳・荒井秋晴・松村 弘・中村匡聡・足立高行・桑原 佳子(2013)糞から抽出されたDNAを用いたテンMartes melampusの個体数推定. 哺乳類科学 53: 311-320.
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6.データ活用研究グループ
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全国には数千にのぼる貯水ダムがあり、各管理事務所では、流量、水位、水温・水質、ダム湖や周辺に生息する生物相などのデータを継続的に取得しています。これらのデータを集約して整理することで、全国レベルの横断的な解析が可能になります。データ活用研究グループは、各事務所に分散しているこれらの貴重なデータをデータベース化すること、そして全国レベルの解析を行うこと、管理事務所でのデータ取得方法に対する提案することを目的としています。各ダムにおけるデータ取得方法の改善提案については、近年発達しつつある環境DNAの、ダム湖や周辺における生物相把握手法としての有効性を検討しています。

主要な調査地
全国のダム・河川
三春ダム(阿武隈川水系、福島県)
大川ダム(阿賀野川水系、福島県)

進行中の研究課題

  1. データベース構築・整理・更新
  2. 樹林化と鳥類群集の変化
  3. 流木流出量と土砂流出量の関係
  4. 全国の魚類の分布パターンとそれに対するダムを含めた人為的影響の解析
  5. ダム湖生物相把握手法としての環境DNAの有効性の検討

代表的な成果
Fremier, A.K., Seo, J.I. and Nakamura, F. (2010) Watershed controls on the export of large wood from stream corridors. Geomorphology 117: 33-43.
Murakami, M., Harada, S., Ichiyanagi, H., Suzuki, T. and Yamagishi, S. (2015) Water reservoirs as reservoirs of non-breeding waterfowl: the importance of shallow areas for maintaining diversity. Bird Study 62: 417-422.
新山優子・辻彰洋 2013. 「総説」藍藻ネンジュモ目の浮遊性種の分類学的変更と類似種の比較. 陸水学会誌 74:153-164.
Seo, J. I., Nakamura, F., Akasaka, T., Ichiyanagi, H and Chun, K. W. (2012) Large wood export regulated by the pattern and intensity of precipitation along a latitudinal gradient in the Japanese archipelago. Water Resources Research 48, W03510, doi:10.1029/2011WR010880.

Seo, J. I., Nakamura, F., Nakano, D., Ichiyanagi, H and Chun, K. W. (2008) Factors controlling the fluvial export of large woody debris, and its contribution to organic carbon budgets at watershed scales. Water Resources Research 44, W04428, doi:10.1029/2007WR006453
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