設立の背景
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 現在、環境保全は特定の地域のみならず、世界のあらゆる地域の重要な問題です。わが国でも人間生活や社会経済活動において、環境問題への取り組みや生態系への配慮は、なくてはならないものとの認識が共通のものとなっています。こうした中で1992年に環境基本法、1997年に環境影響評価法、2002年に自然再生推進法、2008年には生物多様性基本法が制定されました。河川に関しても治水・利水と併せて、環境の整備と保全を河川管理の目的の一つとした河川法の改正が1997年に行なわれ、環境保全を目指した施策が展開されてきました。河川は森林を源流として、上流から下流へと水が一方向的に流れる連続した開放空間です。河川生態系の保全には、水源地域の森林から河口に至るまでの流域を一貫したものとして捉えることが科学的にも社会的にも必要となります。なかでも水源地域は、人間生活と社会経済活動を発展させるために、治水・利水を主目的としたダム事業がさかんに行なわれてきたところです。ダム事業では、河川水がためられ、河川流量が操作されるので、貯水池に新たな生態系が生み出されるだけでなく、ダムの下流河川における土砂供給の様態・水質・流量の変化がおこり、これにともなって河川生態系そのもの、あるいは貯水池周辺の生態系に変化がおこると考えられます。また保全の実行にあたっては、河川生態系が古くから人と相互に関わりあいながら形成されてきた、という歴史認識に立って、より良い流域を持続的に作り出せる社会的なしくみを形成していくことも必要になります。

 水源地生態研究会は、水源地生態研究会議(1998-2007年)を母体に、研究をより統合的に行なうこと、研究成果を水源地域の保全につなげる具体的な道筋を立てることを目指して発展的に改組したもので、ダムが生み出す生態系を科学的に把握し、水源地域の保全のあり方を探求することを目的として、2008年5月に設立されました。


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